株価を完全に予想することはできません。
株価がドーンと下がってしまっては、自分の懐が大打撃を受けてしまいます。最低限、株がどんな要因で値動きする可能性があるか、知っておきましょう。
株の値動き要因は9つあります。
- 需要と供給のバランス
- 景気
- 金利の上下
- 企業の業績
- 日本の政治やニュース
- 海外の情勢やニュース
- 市場内部の要因
- その他
- 株主優待の権利確定日の関係
繰り返しますが、株の値動きを完全に予想することはできません。そんなことができるのは神様くらいです。ですから、どんなに優れた投資家でも、読み違えてしまい、株の値動きにより損失を出してしまうリスクをゼロにすることはできません。
ただ、挙げた9つの要因は、比較的チェックしやすく、株に投資する人の多くが多かれ少なかれ気にかけている要因です。専門用語を最初からがりがり暗記する必要はありませんが、①から⑨に関するニュースはなるべくチェックしておき、分析力を養うことが必要です。
①需要と供給のバランス
オークションでは、1つの商品に対して、その商品が欲しいという人が増えれば、価格が上昇します。大根が不作で市場にあまり出回らなくなると、大根の価格が上昇します。欲しい人が「ください!」「私にもください」「私に売ってくれたらもっと高い額を払います」という状況になってしまうからです。
よく「気象条件が悪くて野菜が不作」というニュースを耳にしませんか。そうすると、野菜をよく購入する人は「不作だから野菜の出荷量が少ない」→「野菜に対して欲しい人がたくさんいるという需要と供給のバランスが崩れる」→「野菜が値上がりする」と思考が繋がります。
これは、株でも同じことがいえます。
たくさんの人が欲しがるA株。しかしA株は発行数が少ないため、欲しい人だけがたくさんいる状況です。A株は値上がりします。この需要と供給のバランスによって株価が上下します。
ただ、株においては需要と供給のバランスが崩れることは、必ずしも悪いことではありません。需要と供給によってどの株価が上がるか予想できれば、その株をあらかじめ買っておくことでリターンを得ることができるからです。
反対に欲しがる人が少ない株は値下がりします。
需要と供給の状況はどうなっているか。将来的にどうなりそうか。自分なりに分析することが大切です。
②景気
株価は景気にも左右されます。景気がいいとお給料が上がり、物がよく売れます。物がよく売れると会社の利益もアップし、配当や株主優待などに回すお金が増えます。増えた結果「お、これは良さそうな株」と、投資家が増えます。
さらに、投資家が増えると、需要と供給のバランスから、株価が上がる可能性が高くなります。A株が100株売りに出ていたとして、1人しか欲しい人がいない場合と、1万人欲しい人がいる場合では、需要と供給から株価がまったく違ってくることでしょう。景気がよくなるとお給料が増えるため、株に投資する額や人が増えるところもポイントです。
③金利の上下
金利の上下も株価に関係があります。
一般的に金利が上がると株価が下がり、金利が下がると株価が上がるといわれています。
なぜかというと、金利が上がると、株より預金に人気が集まってしまうからです。預金は100万円預けたら100万円という、金融サービスの中でも安全性の高い存在です。預金の金利が高ければ、今まで「金利が低いから」という理由で株に投資していた人たちが株を売却し、預金へ移動してしまうのです。
また、金利が高くなると、企業が金融機関から借入しているお金に対しての利子も増えます。返済によって企業が圧迫され、業績が下がってしまうという懸念があります。
企業側もお金を借りることに対して慎重になり、新記事事業を自重したり、事業を縮小したりします。業績が下がると「こんな株はいりません」とお断りする人が出てきます。事業が縮小すると、ますます収益が下がります。さらに「こんな株はいりません」という悪循環に陥ってしまうわけです。
反対に、金利が下がると、株価が上昇する傾向にあります。企業はお金を借りやすくなりますし、返済時の利子も少なくて済みます。また、投資家も「銀行に預けてもほとんど金利がつかないから」という理由で株へと投資する人が増えます。その結果、株価が上がるというわけです。
④企業の業績
企業の業績が上がると、その企業の株を欲しがる人が多くなります。企業の業績が上がることにより、株主優待や配当がヴァージョンアップする可能性があるからです。業績が上がりそうな企業の株を「これは上がりそう」と予想して買う人もいます。
需要と供給の関係により、企業の業績が上がると予想される場合や、実際に業績が上がっている場合は、株価が上昇することが多いと考えられます。
⑤日本の政治やニュース
日本の政治の方針や、政治に関わるニュースが株価に影響を及ぼすことがあります。
たとえば、日本の総理大臣が「今後は天然資源関係にも力を入れていきたい」「情報産業も伸ばしたい」と発言したとします。そうすると投資家たちが「そっちの産業が活気づくのでは」と考えて、関連企業の株に投資することがあります。投資が増えると、需要と供給の関係で、株価が上がることが考えられます。
こんな例もあります。日本のニュース番組で、魚が不漁だと報じられました。魚が不漁だと、魚の値段が上がります。魚の値段が上がると、魚の加工品を作っている会社や外食産業、魚を卸している会社が影響を受ける可能性があります。影響を受けると、会社の業績が下がってしまう可能性も考えられます。
魚の加工会社の株を買おうと考えていた投資家がこのニュースを見たらどう考えるでしょう。「これは、株を買っても業績が下がって値下がりするかな」と考えて、買い控えようとするのではないでしょうか。こんな投資家が増えると、需要と供給のバランスから、株価がストンと落ちてしまうことがあります。
⑥海外の情勢やニュース
同じようなことが、海外の情勢やニュースでも起きます。
インターネットで世界中のニュースを瞬時にチェックできる世の中です。アメリカの大統領の発言や、イギリスの投資家の発言などを逐次チェックし、「この株が影響を受けそうだ」という株を買い控えたり、「この国の産業は景気がいいな」と世界の裏側の株を購入したりと、日本のニュースのみならず、海外のニュースや情勢が日本の株価に影響を与えることがあります。
また、貿易の状況が株価に影響を与えることもあります。
為替相場の円高と円安は、貿易会社や、輸出入をしている会社から品物を購入している会社に大きな影響を与えます。円安や円高という言葉と一緒に「〇〇の輸出に影響」などのニュースが報じられることがあります。輸出入関連の企業や原料や商品を輸出入に頼る会社に投資する時は、為替相場が株価に影響を与える可能性を考え、ニュースや相場をよくチェックしておくことが重要です。
⑦市場内部の要因
まったく予想もつかないような株式市場の要因が株価に影響を与えることがあります。株式市場は、要は投資家の集まりです。特定の業種や趣味の人が集まると、その業種や趣味の人しかわからないような要因やコミュニティが生まれたりすることがあります。
例えば、日本酒好きの人がたくさん集まって、一種の集団を形成したとします。日本酒好きの集団は、「今年もA酒造の季節がやってきましたな」「そうですな」と和やかに話しています。日本酒に興味のない人からすると、意味が分からない会話です。
A酒造では毎年、その季節だけ少量だけの希少酒を出していました。日本酒好きの集団は日本酒事情に詳しいので「季節ですね」「そうですね」で話が通じますが、日本酒事情に詳しくない人や日本酒に興味のない人には、こんなことはわかりません。
株の投資家集団も株事情に詳しい人にしかわからない事情や、企業分析が大得意な人にしかわからない事情で投資し、その結果、傍から見ると「なぜこんなに株価が動いたの?」と首を傾げてしまうような株の値動きが出てしまうことがあります。
ネットやニュース番組で有名な投資家が意見を発表していたら、簡単にチェックしてみてください。
⑧その他
他にも、意外なことが原因で株価が上下することがあります。「自然災害や戦争」「気候」「規制や制度」がその要因です。
自然災害や戦争、気候によって、仕入れや企業設備にダメージを受けてしまうことがあります。ダメージを受けると利益が少なくなり、会社の財産も減ってしまうため、株価が下がる要因になります。
自然災害や戦争によって事業が制約を受けることもあります。仕入れルートが危険で使えなくなったり、品物が入って来なくなったりするのです。そうすると、事業自体も影響を受けざるを得ませんので、最終的に株価に反映されることになります。
金融に関わる規制や制度も株価に影響を与えます。
例えば、税金に関する制度が翌年、大幅に変わる予定だったとします。変更の内容は、株式の譲渡益に対する課税を増やすというものでした。このような場合は、「来年より今年売ってしまった方が得」と考えて売り注文が増加し、株価が下がる可能性が考えられます。
「来年から株の購入に対して税金を課します」という変更があったとします。この場合は「来年より、今年のうちに株を買った方がお得」と考えた人が株を購入することが考えられるため、株価が上がる可能性があります。
このように、税金や法律、制度などが株価に影響を及ぼすことがあります。
⑧株主優待の権利確定日の関係
株主優待がついている株の場合、株主優待の権利確定日の前後に株価が大きく上下することがあります。
株主優待を受け取るためには、権利確定日に株主であることが必要です。株の取引は会社側の知らないところで行われることが多いです。ですから、株を買った人は株主名簿に記載してもらうことによって、株主だと証明することになります。
会社側は株主名簿を確認して「なるほど、この人が株主か」とチェックして、株主優待を渡すことになります。つまり、株主優待を渡す株主をチェックするために会社側が株主名簿をチェックする日に株主名簿に株主として名前が記載されていれば、その時に株を手放していても、株主優待を受け取ることができるということです。
会社側は「本当に株主かどうか株券を見せてください」とは言いません。そもそも、最近は株券自体を発行しない会社がほとんどです。そこで、株主優待を狙って株に投資する人の間では、株主優待の権利確定日までに株主名簿の手続きをして、手続きが終わって株主優待を受け取ることができることが確定したら株を手放すという方法がよく使われています。
株主優待のために株主名簿の手続きに間に合うぎりぎりの頃になると、駆け込み需要が発生することがあります。そのため、株価が上がり傾向を見せることがあります。反対に、株主名簿の手続きが間に合わない、あるいは手続きが終わる頃になると、「もう株主優待がもらえるからいらない」と、株を手放す人が出て、株価が下がることがあります。
株主優待がついている株に関しては、権利確定日の付近、そして権利確定日が近づいてきたら、株価の上下に、特に注意する必要があります。
株では「風が吹けば株価が変わる」の思考も重要
今回取り上げた9項目は、株価を変動させる要因となり得る基本的な事柄です。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。風が吹くことにより、巡り巡って桶屋さんが得をするということわざです。株にも、似たような性質があるのではないでしょうか。関係のある事柄だけでなく、まったく関係がなさそうな世界の裏側の出来事が、時に株価を動かすことがあります。
株価を完全に予想することはできませんが、投資する上で9項目を参考にすることはできます。何気なく見ていたテレビでこれらの気になるニュースが報じられたら、「それによって株価はどう動くか」「どんな業種の会社が影響を受けるか」を自分なりに分析してみてくださいね。